2020年1月1日水曜日

2019年の読書メーター

2019年の読書メーター
読んだ本の数:105
読んだページ数:26735
ナイス数:1611

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)感想
なるほど、第二次世界大戦の主戦場はヨーロッパだったし、ドイツはヒトラー、イタリアはムッソリーニという「独裁者」が引き起こした世界観(絶滅)戦争だったという見方は戦後に戦勝国、そして敗戦国それぞれの立場から形成されてきた歴史観であり、結果でしかない、という事なのかもしれない。ウェストファリア体制を産み出したヨーロッパが最も悲惨な戦争を戦ってしまった、というのが戦後、EUを形成した原動力なのだろうけれど、いまだ道半ば。日本も客観視してはいられない。
読了日:12月30日 著者:大木 毅
なぜイヤな記憶は消えないのか (角川新書)なぜイヤな記憶は消えないのか (角川新書)感想
故・渡部昇一先生が人生は「記憶」だと、どこかで書いておられたと思う。そのように理解して自己のトラウマ的記憶を書き換え、とまではいかなくても過去の記憶をカウンセリングで思い出させることで改善していく、ということはある程度納得が行く。しかし、そのように自己分析、読み解いていくという作業は「誰が」できるのだろうか。そこまで自己を客観的に分析できるには時間?おカネ?教養?・・・心理学の現場で携わってきた知見は貴重な観点だと思う。
読了日:12月29日 著者:榎本 博明
ミルトン・フリードマンの日本経済論 (PHP新書)ミルトン・フリードマンの日本経済論 (PHP新書)感想
フリードマンは名前こそ知っていたものの、本書でもわかるように、日本では正当に評価されてこなかったことから、また紹介した人たちも主流的ではなかったことから、「異端」的扱いだったようです。その主張はマネタリズム、そして今のリフレ派につながるもののように思う。こういった観点でフリードマンが取り上げられているものが日本ではどれだけあるのだろう。最後に著者の初の著作本であり、その年齢を初めてしって、こういった若手の著作がでてくること自体に、新鮮な、まだまだ日本も希望があると感じさせてくれた。文章も読みやすい。
読了日:12月26日 著者:柿埜 真吾
日本はすでに侵略されている (新潮新書)日本はすでに侵略されている (新潮新書)感想
特にこの10年くらいは、グローバリズムの中に巻き込まれながらも、日本人の為政者たちは内向きな政策、対応に終始して、「日本人」という主語があいまいな土地所有権、所有概念があるがゆえに、多くの外資(その背後には国や軍の動きを含む)に国土が浸食されている様は来るべき国家の概念を崩しそうな、日本人のアイデンティティを破壊しかねない怖ささえ覚える。もっと取り上げられていい話題。そして、少子化、人口減少に対するもっと危機感を持たないと。
読了日:12月18日 著者:平野 秀樹
宇宙は無限か有限か (光文社新書)宇宙は無限か有限か (光文社新書)感想
松原先生の前回の宇宙の構造に関する本は難しかったけど、こちらは比較的読みやすい。しかし、「無限」に関する考察は挑んだ数学者がうつ病や餓死(有名なゲーデル)したりと、精神を病んでしまう姿をみると、有限な人間が無限を扱うことは矛盾をきたしてしまうものなのかもしれないと思った。自分としては最終章の「情報の宇宙」論にとても魅力を覚え、人間原理宇宙論的な発想になるけど、自分が観測する宇宙が「宇宙」なのだと、この辺は認識論の世界になってしまうかな。
読了日:12月14日 著者:松原隆彦
韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)感想
韓国は日本より学歴社会、受験戦争が厳しい、くらいの認識しかなかったけど、とくにここ20年くらいの韓国は全世代あげて「過酷な」競争社会になってしまっているのがよくわかった。当然ながら敗者にあたる貧困な世代は過激になってしまうことが、「反日」「反米」に向かう根源的な問題ではないかと思った。行き過ぎた「資本主義」とあるが、というよりこれは歴史的な要素が色濃いのではないか。日本でもマイルドではあれ同じ問題を抱えているのであり、この点からもやはり隣国、根は同じではないかと思えてくる。
読了日:12月13日 著者:金 敬哲
ユダヤ人埴輪があった! 日本史を変える30の新発見ユダヤ人埴輪があった! 日本史を変える30の新発見感想
タイトルのユダヤ人埴輪の衝撃は、それ自体がテーマで書かれた前作の著者の本に詳しいが、なぜ歴史学「会」や、社会での認知度が低い(と、いうより無視)のか。著者の本も三冊目になってかなり田中先生の史観に引き込まれてきたのだが、この本の最後に答えがある。西洋文明の分析的・批判的発展手法を無批判に日本人の文明・人生観に取り入れてしまったことが問題であるという事だ。分析するのは本来全体を統一的に把握するためであるが、対立・闘争の人生観を見直さなければならない時代ということか。
読了日:12月10日 著者:田中 英道
松井石根と南京事件の真実 (文春新書)松井石根と南京事件の真実 (文春新書)感想
城山三郎の「落日燃ゆ」で描かれた廣田弘毅は、中国に対して融和的な政治家でありながら、軍部にひきずられ、東京裁判で断罪された悲劇の宰相~それが自分にずっとイメージで残っていた。その後、中公文庫の「廣田弘毅~『悲劇の宰相』の実像」で少し変わりはしたが、本書では共に処刑された陸軍大将である松井石根の姿が(廣田との関わりも出てくる)、廣田以上に直接戦闘にかかわる軍人故に中国に対する愛情と責任をもちながら、それゆえに避難され、断罪された悲劇の人間の姿を見る思いがした。もちろん先の戦争を正当化はしないが、~続く
読了日:12月07日 著者:早坂 隆
愛 (講談社現代新書)愛 (講談社現代新書)感想
「愛」に対する哲学的考察。タイトルを見て、章立ての最後が「真の愛」だったことだけで購入。著者は初めてだけど教育に関する本をいくつか書いている教育・哲学の準教授だと後になって知った。「人類愛」から始まって「真の愛」に関する思索はそれほど難解ではない。何度も出てくる「存在意味の合一」と「絶対分離的尊重」の弁証法、そして「自己犠牲的献身」。単に言葉のみならず、最後には原則を明らかにすれば、実際の「愛」に応用できるという、学問ではなく「生きた」ものにしたい著者の意思がどこかしら伝わってくる。
読了日:12月05日 著者:苫野 一徳
ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)感想
倉山先生の本は文章が独特で親しみやすいのだが、かなり深い歴史理解の土台がないと本当の意味で読み込んだ感じにならないように思う。30年戦争後にウェストファリア体制でヨーロッパの国家秩序が始まり、現代に至る、くらいの理解では本当に平和とか、戦争とか、議論してもなんの深まりもないことがよ~くわかった。そして、日本という国の特質もよくわかる内容だった。日本として誇っていい内容が、敗戦により潰され、ゆがんだ平和・戦争観となってしまった日本をどうにかしたい、という著者の想いが伝わってくる。
読了日:11月30日 著者:倉山 満
反日種族主義 日韓危機の根源反日種族主義 日韓危機の根源感想
確かに、韓国人の立場から読めば、「自虐史観」と映ってしまう内容に満ち溢れていて、事実には違いないけれど、正視に絶えないものに違いない。「親日」というレッテルを貼られて一方的に攻撃されているようだけれど、読んでいても全く「親日」と感じられるところはない。むしろ慰安婦問題は日本人の嘘から火がついたことは、日本の中にも反日種族主義が存在することの事実は、国というものにたいするあり方、捉え方を日本人も深く考えていかないといけない、示唆に満ちた内容だった。
読了日:11月23日 著者:李 栄薫
韓国 堕落の2000年史 (祥伝社新書)韓国 堕落の2000年史 (祥伝社新書)感想
2001年に出版されたものが今回新書化されたもので、出版社の販売戦略でもあるが、現代の韓日関係を見据えて新書化されたところに意義がある。自分としては隣国でありながら、欧米以上に韓半島での歴史を知らなかったことを痛切に感じる。イサンとトンイを見ていたおかげで読み進めることはできたが、史実はあまりにも日本のそれとかけ離れている。日本人がこれを書いたらヘイト、となるのだろうけれど、韓国人の学者がこれを書くので、読むことはできる。(いささか自虐的な調子はあるが)あと、日本に皇室がある事はありがたいと、率直に思う。
読了日:11月21日 著者:崔 基鎬
明智光秀: 牢人医師はなぜ謀反人となったか (NHK出版新書)明智光秀: 牢人医師はなぜ謀反人となったか (NHK出版新書)感想
続けて読む光秀本。出版されたばかりで、ずばり来年の大河にむけたNHK出版新書。ドラマ的でもなく、本能寺の本当の原因追及でもない、光秀本人の、また同時代の文献に出てくる行政官としての資質、内容からみた光秀の性格などを読み取れることが、戦国武将でもありかつ人間的内容を捉えていて、面白かった。怨恨説とか、黒幕説とかというものを期待して読み始めると本能寺はあっさり終わってしまうが、本人の文書、関係する人たちの文書から光秀自身を読み解いていく楽しさがあった。
読了日:11月14日 著者:早島 大祐
本能寺の変 (講談社学術文庫)本能寺の変 (講談社学術文庫)感想
光秀もの、来年の大河に向けて新刊本が書店に並ぶのが目に付くようになった。文庫本ということでそれなりにこなれているのだろうと思い、読んでみた。自分の光秀観は明智憲三郎から入ったので、その観点から読んでしまうのは仕方ないが、本書は最新の史料も反映しながら「鞆幕府」による足利幕府再興の流れが確実にあったること、本能寺は決して「思いつき」とか、「無謀」なものではないこと、秀吉の動きが予想外であったことが結果として滅ぼされ、多くの事実が隠されたこと。歴史を読み解くのは難しくもあり、面白さでもある。
読了日:11月10日 著者:藤田 達生
邪馬台国は存在しなかった (勉誠選書)邪馬台国は存在しなかった (勉誠選書)感想
著者の本は二冊目。先に読んだ「発見! ユダヤ人埴輪の謎を解く」を読んでいたので、著者のスタンスが分かった上で読めば予想はある程度ついていたので、それほどびっくりはしなかった。他の本でも魏志倭人伝がどれほど正確に日本の事を伝えようとしていたのか、「卑弥呼」という蔑称で分からないといけない、ということ。それよりも、古事記・日本書紀という日本の歴史を伝えようとしているはるかに(日本人にとって)信頼のおける文書があまりにも戦後軽んじられたことが、天皇家を頂く日本国のアイデンティティを見失う根本原因がある。
読了日:11月07日 著者:田中英道
宇宙はなぜブラックホールを造ったのか (光文社新書)宇宙はなぜブラックホールを造ったのか (光文社新書)感想
本書で新しくわかったこと。(読み違えもあるかもしれないが)宇宙の原初、星、銀河の創成に極小のブラックホールがかかわっている。ほとんどの銀河の中心にはブラックホールが存在すること。銀河が衝突し、融合する中心のブラックホールはさらに大きくなって成長すること。ホーキングの著書でブラックホールの蒸発や、事象の地平線という認識はもっていたが、ついに今年はそのブラックホールを捉えることができたニュースに触れて、本書の10の100乗年先の宇宙観まで予測できる時代まで来たという感慨というか、感動を覚える。宇宙は、美しい。
読了日:11月05日 著者:谷口義明
発見!  ユダヤ人埴輪の謎を解く発見! ユダヤ人埴輪の謎を解く感想
佐伯博士に始まる日猶同祖論、邪馬台国と大和政権、宇佐神宮にまつられる八幡の神~応神天皇。これまでも興味を持ってきたつもりではあったが、表紙のユダヤ人埴輪のインパクトは(知っていたはずなのに)なかなか破壊的な日本の古代観を自分にもたらしてくれた。著者の本は初めてだけれども、アカデミズムの外からのこういう研究(Youtubeでも著者の主張がきくことができる)は、もともとではあるが、こえからの日本のアイデンティティ~ひいては隣国や国際的な観点を備える為にもとても大切な内容ではないかと思った。面白かった。
読了日:11月01日 著者:田中英道
岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか~ (新潮新書)岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか~ (新潮新書)感想
岩盤規制に関しては上念司氏の著書でも読んだが、岩盤規制に取り組む著者故により問題点がよくわかる。毎日新聞との係争中であり、特区WG座長として、国会でもいわれなき批判を受けているということでより岩盤規制に関する関心度は高まっていると思う。一方的に岩盤規制を正す、というよりより高い次元から時代にそぐわない、利権故にゆがんでしまった制度を見直すという著者の姿勢がよくわかる。相互に議論しながらより自由な、秩序ある制度作りは本来地道な歩みなんだろうけれど、待ったなしの今必要な改革だと思う。
読了日:10月31日 著者:原 英史
新説 坂本龍馬 (インターナショナル新書)新説 坂本龍馬 (インターナショナル新書)感想
龍馬の役割、薩長そして土佐藩との仲介役としての役割の大きさを知った。船中八策や、薩長同盟との関わり方は随分これまでの定説とは違っているが、それでも竜馬の生き様は幕末の重要なポイントになっているし、幕吏もふくめた多くの人間関係によって多面的な観点から龍馬を見つめることができるのが、また歴史を見つめる者にとって魅力あふれるものになるのだと思う。戦後の昭和に造られた司馬による龍馬観はそれはそれで価値はあると思うが、より深まる龍馬観が魅力的。
読了日:10月28日 著者:町田 明広
夫のトリセツ (講談社+α新書)夫のトリセツ (講談社+α新書)感想
出るとは思ってました。(著者は出すつもりはなかったようですが)即買い。「共感障害」を読んだあとで、最近の著者は自身の体験や、自分自身を分析していたりして、その点はかなり親しみやすく読める。なにより、単なる男と女の脳の違いを即物的に語るだけでなく、夫婦の価値論的内容も描かれていて、好き嫌いはあると思うが、夫婦関係(男女間)のトラブルは一つになりたい方向で読みさえすればかなり著者の本で解決できるのではないかと思う。
読了日:10月26日 著者:黒川 伊保子
世界のニュースを日本人は何も知らない (ワニブックスPLUS新書)世界のニュースを日本人は何も知らない (ワニブックスPLUS新書)感想
平成の最後10年間(2008年以後)は、リーマンショックが原因なのかどうかはわからないが、そのあたりから平均的日本人が世界との接点を持つのに大新聞と強く結びついたテレビ、NHKの情報寡占状態が悪い方へ(報道する側の良心といものが怪しくなってしまう)傾いてしまったことが、日本人の視野を狭く、また誤解の多いものにしてしまったようだ。相変わらず大新聞、既存のジャーナリズムはネット空間の言論を敵視している。単なる紹介にとどまらず、最後にはその情報の捉え方、アクセス方法を教えてくれているのは大変参考になる。
読了日:10月21日 著者:谷本 真由美
発想法 リソースフル人間のすすめ (講談社現代新書)発想法 リソースフル人間のすすめ (講談社現代新書)感想
高校生でハマった「知的生活の方法」、おそらく本書もその流れで高校生のうちに読んだものであると思う。とすると35年~38年ぶりの再読となる。リソースフルな人間の生き方として代表的な日本の著述家・評論・文学者たちを題材に説得力のある内容は、後半にヨーロッパ、キリスト教文化圏、オカルトに至るまでの話に広がって、単なるノウハウ本ではなく、時代や国を超えた視野をも与えてくれる。内容は忘れていたが、自分の自己形成に多大な影響を与えてくれた本だ。「知的生活の方法」に次ぐ、自分にとって古典的な一冊だ。
読了日:10月20日 著者:渡部 昇一
朝鮮属国史 中国が支配した2000年 (扶桑社新書)朝鮮属国史 中国が支配した2000年 (扶桑社新書)感想
なんにせよ、朝鮮半島の歴史を自分はあまりにも知らない、という事を痛切に感じた。日本から目線にせよ、中国からの目線にせよ、また朝鮮民族(「朝鮮」という呼び方自体が中国がつけた、ということを考えれば、ここは「韓民族」がいいのか・・?)自身の目線からの歴史観というもの自体も、あまりにも揺れ動いてしまっていて、こうなると本当に国のアイデンティティをもつには強烈なイデオロギーが必要になってくるということなのかも。隣国に対するもっと深い理解が必要だ。
読了日:10月19日 著者:宇山 卓栄
共感障害 :「話が通じない」の正体共感障害 :「話が通じない」の正体感想
自閉症、自閉症スペクトラム~治療のため、保険診療のために必要だからこの用語が使われるのだと思うが、これに対応する英語がAutismとは初めて知った。ずいぶん響きが違う。著者の男女脳の分析と夫婦間、男女間のすれ違いは実は、お互いに必要なものであったという観点からの関係性改善、男女相互理解の本をずっと読んできただけに、その著者自身が導き出した「共感障害」の理解は職場でも、家庭でも、人間関係の改善にきっと役に立つと思う。共感、すなわち相手の立場で物事を考える、のなんと難しいことか。最後は諦めないのが肝心。
読了日:10月13日 著者:黒川 伊保子
神武天皇「以前」 縄文中期に天皇制の原型が誕生した神武天皇「以前」 縄文中期に天皇制の原型が誕生した感想
縄文~この呼び名は明治になってモースが名付けた土器の種類から始まるが、戦後、というよりここ30~40年の縄文遺跡の発見から大きく縄文時代・弥生時代という概念が変わりつつある。自分も小学生のころ読んだ歴史観しかもっていないので、アップデートが必要なんだと思う。縄文時代も争いや悲惨なことはあったと思うが、確実に「文化」がそこに存在し、火焔土器、土偶がこれほど多く出土するという事自体、それ自体が縄文文化というものを説明してくれているのだと思った。唯物的、進歩史観そのものを自分自身の中で見直していきたい。
読了日:10月13日 著者:宮崎 正弘
キリスト教と死-最後の審判から無名戦士の墓まで (中公新書)キリスト教と死-最後の審判から無名戦士の墓まで (中公新書)感想
ほとんどタイトルだけで買い、宗教的内容を期待していたので、後半の英国での墓にまつわるエピソードはちょっとついていけなかったところがある。しかし読了して感じたことは、子どもが初めて出会う「死」への受容について、ほとんどの人は親族のものであるだろうが、そうではないケースもあるわけで、その場合の「死生観」とか「永遠の生命」、キリスト教でいう「復活」観は歴史的には様々な「形」をとってきた、ということだ。形を捨てて、かつ、霊性をもとめていくことは現代ではどのようになっていくのだろうか。
読了日:10月06日 著者:指 昭博
妻語を学ぶ (幻冬舎新書)妻語を学ぶ (幻冬舎新書)感想
基本的なところは、妻のトリセツ、等ですでに描かれているところだけど、「妻語」で表現される言葉を解説し、男性がどのように対応すべきか、ケース別にまとめられていて、よりわかりやすく、かつ有用な構成になっているかと思う。恋人、夫婦、いずれにせよ男と女がつき合っていくのは異物を取り込んでより大きくなろうとする人間の本性であり、異物を排除しようとする独善的な思考法は滅びるしかないし、未来がなくなっていく。夫婦円満の秘訣は女性を尊重する男の配慮、ということか。逆説的に、男の大きさを知らされた。
読了日:10月04日 著者:黒川 伊保子
逆転大名 関ヶ原からの復活 (祥伝社新書)逆転大名 関ヶ原からの復活 (祥伝社新書)感想
立花宗成について知りたくて読み始めたが、タイトル通り、関ケ原で一旦大名の地位を降りながらも、再び復活した武将たちのドラマをとても面白く読めた。戦上手と強さもさりながら、人間的魅力、文化人的要素、そして忠義をつくす姿はどんな時代でも生き残るために必要な要素であると思う。 大分にかかわりのある武将たちも多く、改めて大分の武将たちについても理解を深めていきたいと思う、いいきっかけになった。
読了日:09月27日 著者:河合 敦
それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条感想
ずっとマザーテレサの言葉だと思ってきていたもののルーツが本書の著者であることを初めて知って良い意味での驚きと、その著者自身も若い時の言葉を30年たって再び外から見いだすという経験をしていることが、この言葉の普遍性を物語っている。自分もことあるごとに、この言葉には救われた思いがするし、50代となってさらにこの言葉に力をもらっている。いろんな人の経験、この言葉による生き方の証しを聞きたいし、自分も語れるようになれたら素晴らしい。
読了日:09月26日 著者:ケント・M・キース
憲法学の病 (新潮新書)憲法学の病 (新潮新書)感想
昨年、著者の「ほんとうの憲法」を読み、さらに倉山満氏の憲政史観にふれたので、日本の「憲法学」なるものの「ガラパゴス化」の実体はある程度わかっていた。ここでは「病」なるものとしてほとんど病理的な日本国内での憲法学者たる「権威」が既得権益化してしまっている実体を描き出している。戦前なら「国体」というべき国のあり方を問う上で必要な論議。よく揶揄される「不磨の大典」として書き換えや論議すらさせない権威たちはほとんど宗教的価値観で憲法を捉え、国民に押し付ける。そこに学者の「良心」はあるのか。謙虚さが必要。
読了日:09月24日 著者:篠田 英朗
幸福論 第3部 (岩波文庫 青 638-5)幸福論 第3部 (岩波文庫 青 638-5)感想
読書メーターでは初読だが、あちこち拾い読みしてきていて、今回5か月かけて初めて通読。毎朝通勤のバス10分程度の中ですこしずつ、行きつ戻りつ読んできた。この読み方が良かったかもしれない。ヒルティの幸福論の中で、1部がもちろん有名で、こちらは読み込んだ感覚があるが、3部はキリスト教の本質的なものが全面にでてきて、聖書の聖句もたくさん注釈にでてくるので、そのあたりは少し面食らうが、読み終えてみると、キリスト教の本質こそ、幸福を語り、実践する至上のものであり、生命の永生観がそこになければならないことがよくわかる。
読了日:09月23日 著者:ヒルティ
奴隷船の世界史 (岩波新書)奴隷船の世界史 (岩波新書)感想
本書でも出てくる奴隷貿易船の図面。イギリスで奴隷貿易廃止の為の啓蒙として描かれた図面だが、昨年、ゴレ島の事を調べていて初めて見た時はかなりショックだった。新大陸への植民化とともに、砂糖、コーヒーなどの大規模プランテーションの労働力としてアフリカで調達された奴隷たちの扱いはまさしく「動く牢獄」そのもの。現代的価値観から当時を批判するのは簡単だが、ヨーロッパを中心とした当時の価値観抜きには語れない。奴隷制度を否定したからとて人間の本質的矛盾は常に今も考えるべき課題。
読了日:09月23日 著者:布留川 正博
あなたはあなたが使っている言葉でできている  Unfu*k Yourselfあなたはあなたが使っている言葉でできている Unfu*k Yourself感想
3分の2ほど読んで少し放置。そのあと一気読み。アファメーションではなく、アサーション(適切な自己主張)7つについてわかりやすく、簡潔に書かれている。ここに引用される言葉が、エピクテトス、マルクス・アウレリウス等のストア哲学者のことばが多く出てくるのは、コーチングを専門とする著者らしい引用であり、読みやすかった。考えを変える、ではなく行動を変える、を強く勧める実践本。
読了日:09月23日 著者:ゲイリー・ジョン・ビショップ
沖縄の不都合な真実 (新潮新書)沖縄の不都合な真実 (新潮新書)感想
佐藤優氏が「沖縄の基地問題は本質的に差別問題」とたしか述べていて、長期にわたる辺野古基地移転問題は差別される沖縄の人たちの事を理解しないといけないと単純に思っていたけど、本当はもっと根深い、それこそ表面的な反対運動だけみていたのでは分からないものがある事を知って、ある面ショック。 九州8県で人口が増えているのは福岡と沖縄。沖縄は若者が多いとも聞く。この時代になぜ沖縄は増えているのか、この辺りもよ~く考えてみる必要があると思った。
読了日:09月20日 著者:大久保 潤,篠原 章
韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態感想
ある程度予想はしていた内容ではある。自分はソ連、北朝鮮は「民主主義」国家だ、と中学では教えられた(日教組教育だと思う)。今思うととんでもないが、「民主主義」という言葉とのファーストコンタクトがそれでは、どうしてもそのイメージがベースとなっていまだに自分の価値観が混乱している。そのくらい教育で刷り込まれる内容は表面上過激ではなくてもその人の価値観を決定する。自戒を込めて書かれているように思うが、日本人としても反面教師として読み、そして隣国の人たちをどう見つめ、つき合うか、を考えたい。
読了日:09月17日 著者:崔 碩栄
三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録感想
「すごいものを読んだ」、というか「希望を覚える」・・・?読後感。かつて中学校でソ連は「民主主義」だと教えられた記憶がある。北朝鮮も「民主主義」がついてるのも納得していた。社会主義北朝鮮、自由主義韓国といった単純なくくりのまま統一がなされるわけではないし、いままさに韓国も巻き込みながら金王朝体制の限界が見えてきている。イデオロギーで分断された国の悲劇があり、著者が脱北するきっかけは子供の召喚であったことは、革命血統を重んじる北朝鮮体制の矛盾をそこに見る。平和的統一をなによりも願うのは日本のためでもある。
読了日:09月14日 著者:太 永浩
データで読み解く「生涯独身」社会 (宝島社新書)データで読み解く「生涯独身」社会 (宝島社新書)感想
生涯未婚率、男性がなぜ圧倒的に高いのか。少子化問題で出てくる一つのテーマ。一向に解決策が見えないこの問題はいまや国が衰退(人口減少)するのも「受け入れていくべき」という論調まで出てくる状態の中で、この本はエビデンスベースで生涯独身、未婚率、少子化といったテーマに対する「常識」が実は一種のイデオロギーであることを気づかせてくれた。そういえば、自分も結婚は30歳になってから、なんて漠然と社会常識として洗脳されていたのかなぁ、と思ってしまう。人としての価値観は正しい情報と教育で作られる。大切な視点をもらった。
読了日:09月04日 著者:天野 馨南子
朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作 (PHP新書)朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作 (PHP新書)感想
巻末に記載される、朝鮮戦争の際の日本人の具体的な関わりについて、たとえ占領下であり、また平和憲法故に当時の日本人の立場について、ほとんど現在の政府は「不明」で通していることについて、「それはないだろ」と率直に言って思う。9条改憲以前に、当時の日本人が朝鮮半島にどのようにかかわったのか、この点に頬かむりしてどんな日本人としてのアイデンティティができるのか。現在の日韓問題の大きな要因が隠されているように思う。「理不尽」な要求の根底は日本側のこの点の鋭い反省がかけているからではなかろうか。
読了日:08月29日 著者:江崎 道朗
上級国民/下級国民 (小学館新書)上級国民/下級国民 (小学館新書)感想
ここで書かれていることは、徹底したリアリズム。著者がエビデンスを元にした議論を展開していることはよくわかる。理想、思想、イデオロギーで「こうでなければならない」という方向にエビデンスを合せるのではなく、エビデンスそのものに論理をくみ上げていく、ということでは徹底した唯物論(科学)的思考法だ。そのなかで国の中で「分断」を見いだすのは当然である。しかし、そこにあえて(情緒的な感覚?)愛とか希望とか夢を見いだしたい「自分」はスッキリしないものを持ってしまう。冷静さは必要だが、希望は持ちたい自分は欲張りなのかも。
読了日:08月21日 著者:橘 玲
日本共産党の最新レトリック日本共産党の最新レトリック感想
著者の本はこれが初めて。元共産党員となると「反・共産党」だから批判するのは当たり前、と共産党側は見ているんだろうと思う。書かれている内容、批判されていることに関して真摯に向き合えるわけがない。なんせ、共産主義そのものが矛盾をはらんでいる(唯物史観に立脚したイデオロギーによって全てを見つめる、あやまった主知主義、とでもいおうか。矛盾、対立構造の解消は物理的力~暴力が必要ということになる)ので、そこは真摯に検討どころか、理論の立脚点なので共産主義が成り立たなくなる~もう、これは疑似(誤った)宗教です。
読了日:08月18日 著者:筆坂 秀世
キリスト教と日本人 (ちくま新書)キリスト教と日本人 (ちくま新書)感想
著者はキリスト教徒ではないと言うが、その点こそがこの本を書くにふさわしいと思った。日本は多くの宣教と殉教、キリスト教の迫害を16~17世紀、19~20世紀と経験しながらも、国の成り立ちがキリスト教と切り離すことのできない西欧文明諸国のなかでは異色な、人口の1%を超える事のない国だからだ。それゆえ、作者の特に最後のキリスト教「信仰」に関する論考は(結論が出るわけではない問題だが)、もともと親鸞に傾倒していた自分にもとてもしっくりくるものがある。日本において「神の国」を考えてみる良い材料になると思う。
読了日:08月15日 著者:石川 明人
運命の八月十五日 日本のいちばん長い日 〈決定版〉運命の八月十五日 日本のいちばん長い日 〈決定版〉感想
毎年恒例の再読。丁度台風10号が過ぎ去る一晩の中で読みながら、終戦74周年を迎えることになった。今回は時系列に従って記述される様々な出来事に対して、もちろん、取材に基づくものではあるのだろうが、著者の見方、思想という部分がより目立ってくるのが感じられる。もちろん人物評は様々だとは思うが、鈴木貫太郎にしても、阿南惟幾にしても本当にその時その時の本人の内面がそうだったのか、というところに違和感を感じる場面が多くあった。終戦に対する見方が近年様々な議論による自分の内面的な変化を感じる読書だった。
読了日:08月15日 著者:半藤 一利
年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図 (講談社現代新書)年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図 (講談社現代新書)感想
現代の日本の実情も踏まえての年代別生き方の観点がとても参考になるし、新鮮な観点をもって社会を見つめる事も出来た。自分の生き方も、生涯をどのようにデザインするかは、自分次第の要素も多大にある。社会がこうだから、時代がこうだから、というのはいつの世代でも言い訳でしかないのかもしれない。(と、言うと違和感持つ人も多いと思うけれど)
読了日:08月11日 著者:和田 秀樹
ルルドへの旅 - ノーベル賞受賞医が見た「奇跡の泉」 (中公文庫)ルルドへの旅 - ノーベル賞受賞医が見た「奇跡の泉」 (中公文庫)感想
カレルは渡部昇一氏が論じている頃から知ってはいたが、ノーベル賞学者の評価がどうして分かれているのかは気になっていた。この本でその疑問は解けた。当時の唯物的人間観の代表者である医師が、それを否定する信仰を持っていたこと、またそれをストレートに表現できない、そういう時代だったということ。またその人間観ゆえに現代であれば非難されるべき優生学をもって社会を変えようとしていたことが大きい。附録として「ル`ドの洞窟」の文章が日本で紹介された当時の雰囲気がよくわかり、とても興味深かった。
読了日:08月11日 著者:アレクシー・カレル
永田鉄山と昭和陸軍 (祥伝社新書)永田鉄山と昭和陸軍 (祥伝社新書)感想
名前だけは知ってたけど人となり、その前後の陸軍の動きをあまりよく知らなかったので勉強になった。若い時に欧州に派遣されたエリートだけに、第一次大戦を実地に研究・分析、そこから国軍というものが、軍隊だけの問題ではなく国を挙げた「総力戦」となる事実を分析しただけでなく、陸軍トップに近いところまでいたことが、暗殺がなければ確実にその後の日本の戦争を変えていたのだろう。国と戦争というものは果たして分かち難いものなのか、「国家」の本質を考えてみたい。鉄山の暗殺は奇しくも84年前の明日、8月12日。
読了日:08月11日 著者:岩井 秀一郎
日本人が知るべき東アジアの地政学 ~2025年 韓国はなくなっている~日本人が知るべき東アジアの地政学 ~2025年 韓国はなくなっている~感想
いい時期に読めたと思う。知っているようで、意外と知らない(学校歴史では教えられていない、また保守的傾向の最近の歴史論調でも扱われていない~自分がこれまで知らなかっただけだとは思うけれども)韓半島・中国・ロシアの歴史、地政学的な観点の見つめ方、大陸からみた日本列島は確かにロシア・中国双方からみれば太平洋へ出ていくにあたってのストッパーに見える。2025年までわずか6年ほどの先の国境、国のありかたは確かに大きく変わっているだろうと思える。示唆に富む内容だった。
読了日:08月03日 著者:茂木 誠
もう銀行はいらないもう銀行はいらない感想
「バブル経済事件の深層」に通じる銀行・金融にまつわる銀行の犯罪の数々。問題は同じことを今に至るまで繰り返す銀行の体質(著者は偏差値エリートのリスク回避志向がもたらす弊害と見ているようだ)が、グローバル経済の時代の世界においてはあまりにも絶望的に見えることが、現代日本の閉そく感もたらす最大の原因であると、著者は論じ、そして未来の(過激にも見える)銀行、いや金融世界を描く。異論はたくさんあり、議論も巻き起こるだろうが、それぐらい言わないと、本当に今の日本はどうなってしまうのか、という思いには共感。
読了日:07月30日 著者:上念 司
歴史問題の正解 (新潮新書)歴史問題の正解 (新潮新書)感想
再読。ここ20年ほどの日韓関係は大きな変化、というか右か左か、大きくぶれまくっているなかで、あらためて読んでみると、著者のスタンスは歴史研究の正統な立場だと思うが、「歴史修正主義者」というレッテルで批判を受けるのは今の方がもっと大きいのかも? しかし、ネットが発達した今、フェイクも含め広く誰でもアクセスできる時代になり、だれもがある程度の著者のような歴史を読み解くスキルが必要だと思う。
読了日:07月28日 著者:有馬 哲夫
太平洋戦争の新常識 (PHP新書)太平洋戦争の新常識 (PHP新書)感想
自分としては、キスカ島の撤退作戦(あの樋口季一郎中将!)が面白かった。戦艦大和については近年評価が変わってきているのかなという印象をうけた。多くの作戦で敗退したゆえに、軍隊としての卓越性や、発揮できなかった本来の「強さ」というものを正しく評価できてこなかった、のがこれまでの太平洋戦争に対する姿勢ではなかったか。真の意味での「反省」が求められているように思う。あと、BC級戦犯たちの中に、毅然として責任をとって断罪されていった軍人たちの姿も印象的だった。
読了日:07月28日 著者:歴史街道編集部
結婚不要社会 (朝日新書)結婚不要社会 (朝日新書)感想
「結婚は幸福を保証しない」という書き出しがすべて。そこを「現代社会の矛盾」とみなし、結婚についての社会学的(?)分析を繰り広げる。著者の主張は理論的には「わかる」ところもあるが、男女の結びつきという人間存在の根本的また生命の出発点ともなる結婚が「幸福の保証なし」という認識で出発するところから違和感をずっと覚えて読み終えた。なので、あまり「読んだ」読後感が薄い。社会学的にはひつような「知識」だろうけれど、なんだか殺伐としたものを感じる読後感。また機会をみて読み直そう。
読了日:07月17日 著者:山田 昌弘
バブル経済事件の深層 (岩波新書)バブル経済事件の深層 (岩波新書)感想
住専処理に6850億円、金融システム保護のために銀行への公的資金が70兆円。取り上げられている事件はかかわった人の「犯罪」ではあるけれど、バブルという現象のなかで作り出された関わる組織(銀行、官僚、政治家たち)の経済的利害が、「罪」を覆い隠して暴走し、バブル崩壊後の悲惨な状況を作り出してしまった。日本の失われた30年、デフレマインドの根本的な原因はこの事件に象徴されている。刑事事件として裁くことは最終的に利益を生んだのだろうか? 銀行、官僚たちはまだこの痛手から立ち直れていないように思える。
読了日:07月15日 著者:奥山 俊宏,村山 治
全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】感想
基礎編では、貨幣論が現代の主流経済学では抜け落ちているがゆえに、デフレ克服、日本の今の経済的課題への取組が根本的に間違いということがわかる。戦略偏では経済政策論から、自由主義、保守主義、民主社会主義、といった政治イデオロギー、国家としての価値観レベルまで議論していかないといけない、そういう時代に入ってきたのだという自覚が政府、政治家たちに必要なんだということをいっているのだろうと思った。著者の主張は尤もだけど、自分も含め、日本の国民性からして、自ら変わっていくダイナミズムはどれだけあるのか?
読了日:07月13日 著者:中野 剛志
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣感想
2月に購入して1章をのこしてしばらく間をおいてようやく読了。事実(FACT)に基づく世界の見つめ方に関する10の偏りを(楽しく)気づかせてくれることにこの本の価値がある。特徴的なのは著者は親と三人の共著で、ハンスは出版前に亡くなり、息子夫婦がそれを引きついで出版されている。親子~家族の協力関係がこの書籍のバックグラウンドにあり、それがこの前向きな世界観に影響しているように思う。訳者のあとがきだが、「本能を支配しようとする人を叩く事よりも、許すことの方が大事です」、ここに本質があるような気がする。
読了日:07月07日 著者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
「 許す 」 という心をつくる ひとつだけの習慣 (サンエイ新書)「 許す 」 という心をつくる ひとつだけの習慣 (サンエイ新書)感想
「許す」という行為?考え?人間生きていること自体が「許されて」生きてるのではなかろうか。「許す」について様々な警句や偉人たちのエピソードがつづられていて、読み進めながら「あたりまえ」といった思いや、「ちょっとよくわからん」という事もありながら、読み終えた。時々は読み進めながら、心に残った所を深めていきたい、そんな風に活用できればいいかな、と思った。
読了日:07月01日 著者:植西 聰
経済で読み解く日本史5 大正・昭和時代経済で読み解く日本史5 大正・昭和時代感想
シリーズ最終巻、おそらく著者の一番特徴が出ているのが大正・昭和時代であり、室町時代から一貫した経済の掟を軸に歴史を描いているところが文庫5冊になったことでよりはっきりしてきている。読んだ実感として、これまでの歴史では室町~戦国~江戸~明治~近代~現代ははっきりと断絶があり、昔になればなるほど貧しく、無知な「日本人」というイメージが、一貫した、室町の時代から、もしかしたら縄文にいたるまで「日本人」は今の自分たちと同じ感覚、感性をもった人たちなんだ、という感覚が持てた。この点が一番の収穫でした。
読了日:06月30日 著者:上念司
経済で読み解く日本史④ 明治時代経済で読み解く日本史④ 明治時代感想
自分が受けた歴史教育(中学・高校)は明治維新のあと、文明開化、富国強兵で日清・日露戦争で傲慢になった軍部が軍政を敷いて、三国同盟でファシズムにシンパシーをもった軍部が起こした太平洋戦争に負けて平和になった日本、というものだが、どうも違う。維新の負の側面~不平士族の処遇が結局、日清・日露戦争まで尾をひくし、また中国・朝鮮・ロシアとの関係なくして日本という国は存在できなかった。日露戦争の経緯をもう少ししっかり教えて欲しかった。それが日中・太平洋戦争の本当の原因であることがよく分かった。
読了日:06月27日 著者:上念司
日本の誕生 皇室と日本人のルーツ日本の誕生 皇室と日本人のルーツ感想
「日本」の成り立ち、その出発点は古事記、日本書紀により書き残された内容と考古学、地質学等を駆使した歴史研究の成果はうなずけるものがある。たしかに歴史を研究していくとその世界の中ですべてが組み立てられてしまうので、それに反する新説は受け入れられにくいと思うが、著者の既成説に対する反論のトーンが少し過剰に感じられるのはなぜだろう。もうすこし謙遜であったら読みやすいのにと。あくまで私の好みの問題だが。明らかな誤解に基づく記述も見受けられたので、ちょっと気になった。
読了日:06月22日 著者:長浜浩明
経済で読み解く日本史3 江戸時代経済で読み解く日本史3 江戸時代感想
「貧農史観」、自分の家が農家であったこと。そして小学校~中学校と歴史を学ぶ中で、江戸時代の農民は年貢に苦しめられ、職業選択の自由もない、江戸幕府という殿様が横暴を極めていた、それが農家である、と歴史を勉強して江戸時代は遅れた、貧しい、大変なことばかりであった、というイメージを植え付けられてしまったことで、農家=百姓=マイナスイメージ~これはとても不幸なことではないのか。「貧農史観」を教えた教師、学者、戦後教育に本当に文句を言いたいし、歴史教育は転換しないといけないと思う。
読了日:06月22日 著者:上念司
新聞という病 (産経セレクト)新聞という病 (産経セレクト)感想
偏らない新聞はない、政府批判もあっていい、大企業の腐敗を暴くのも、事実をもとにした意見や批評をするのも大いにすべき。しかし誤認、対象を貶める誤報があったらきちんと認め、検証し、その後の姿勢も謙虚であるべき。その点が新聞批判の原点にあること。また、普遍的、客観的であろうとするあまり、他国を利する、あるいは正義を振りかざし自国を貶める報道があまりにも幼稚な次元になっているところが「病」となってしまう。社会の分断を産みだす新聞は害でしかない。新聞だけではないのだけれど。
読了日:06月19日 著者:門田 隆将
なぜデフレを放置してはいけないか 人手不足経済で甦るアベノミクス (PHP新書)なぜデフレを放置してはいけないか 人手不足経済で甦るアベノミクス (PHP新書)感想
リフレ派第一人者、前日銀副総裁である著者がデフレとその克服について一般向けに書いているが、結構専門的な内容であり、金融政策についての勉強にもなる本。現在進行形のデフレ脱却論であり、しかしアベノミクス~日銀の金融政策がはたしてデフレ克服になるのか、まだ未知数なところ。インフレもデフレもどちらも行き過ぎは良くない、しかしインフレよりデフレの方がまだまし・・・という感覚がまだどこかにあるのではなかろうか。国際関係も影響するし、自分の中でもまだ整理できていない。
読了日:06月18日 著者:岩田規久男
北朝鮮がつくった韓国大統領 文在寅政権実録北朝鮮がつくった韓国大統領 文在寅政権実録感想
最悪と言われる日韓関係、といっても韓国側はそういう認識は薄いように見える。「嫌韓」という言葉、「反日」という言葉、どちらも偏っているように見える。ある人はネットがその違いを煽り、苛烈になっているように言っているが、それだけではない、今の状態はさらに高い段階で隣国として、兄弟国として生きて行くためのひとつのステップととらえたい。南北に民族が分断され、戦場となった記憶は日本人として分からない。かといってそれで一つになれないということはさらに悲しい。相互理解の難しさを感じる。
読了日:06月18日 著者:李相哲
経済で読み解く日本史② 安土桃山時代経済で読み解く日本史② 安土桃山時代感想
前作との加筆や書き直した部分を明確にしらべたわけではないが、秀吉に対する評価、朝鮮出兵前後の記述はおそらくおおきく書き加えられていて、グローバルな当時の世界的観点と秀吉の先見性や限界等がよくわかるし、それは近代、現代の世界の中での日本を見つめる上で重要な観点となっている。歴史を学ぶ目的は現代をどう生きるか、という点でとても分かりやすく、有効な歴史として一つの形になっていると思う。こういう歴史で学なら学校の勉強もずいぶんと面白くなる。
読了日:06月18日 著者:上念司
シュピリ『アルプスの少女ハイジ』  2019年6月 (NHK100分de名著)シュピリ『アルプスの少女ハイジ』 2019年6月 (NHK100分de名著)感想
ああ、いかん。解説の本を読むだけで涙が。悲しいのではなく、あえて言えば、ハイジを始めとした登場人物たちの純粋さに心が洗われる、からだろうか。あらすじと作品の背景がえがかれているだけだし、放送のほうは1回分しか放映されていないのだが、この作品の描かれている世界には、なぜかとても情がいく。角川文庫版をたしか小学生の時に読んだ記憶があるが、アニメでは現れない、宗教的人格形成の描かれ方が、自分の人生の中にも大きく影響しているのだと気がついた。ヒルティの作品にもでてくる、スイスが舞台というのも改めて何か縁を感じる。
読了日:06月10日 著者:松永 美穂
経済で読み解く日本史① 室町・戦国時代経済で読み解く日本史① 室町・戦国時代感想
「経済で読み解く織田信長」に加筆したもので内容はほぼ被ると思う。あらためて日本人の大陸に対するバイタリティ、寺社勢力が現代における宗教という枠をこえた一つの社会勢力、銀行と商社であり、武家勢力に対抗していた既成一大勢力であったという観点がおもしろいし、現代の社会を考えていくうえでも大変参考になる。800年前もいまも、やはり人間は人間であり、社会的な継続性もあるのだと思った。
読了日:06月05日 著者:上念司
教皇フランシスコ: 南の世界から (平凡社新書)教皇フランシスコ: 南の世界から (平凡社新書)感想
著者はラテンアメリカ近代史が専門とのことで、現教皇の出身地である南米の歴史(カトリックが色濃く影響する)に詳しい内容をしることができてよかった。史上初の南米出身の教皇ということもさることながら、イエズス会出身で名前がフランシスコ、というのもキリスト教の歴史からいっても現教皇の時代は後からでないと分からないだろうけれど、カトリックと世界とのつながりの中で大きく変化していく転換していくように思う。
読了日:05月31日 著者:乗 浩子
平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで (中公新書)平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで (中公新書)感想
同じ中公新書で92年に出版の宮崎義一氏「複合不況」は米国と日本のバブル崩壊を紹介していて、世界的不況の金融的側面の理解が大事であることを教えてくれた。本書はさらにその先、平成時代の金融面における日銀・大蔵~財務省・金融庁および政治がどのように日本の経済の舵取りに取り組んできたのかがリアルに描かれている。アベノミクスにいたるまでの様々な取り組み、また、いまだその評価も様々な中でベストを尽くそうとする人たちの姿がリアルだった。まだ日本経済再建も道半ば、なのか?金融は本質的なものに立ち返る時代なのかも?
読了日:05月29日 著者:西野 智彦
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路感想
バブルが崩壊して、その痛みから脱却できずにデフレを当たり前としてきた30年間、大東亜の理念をもってその中心たらんとして最終的に破滅し、平和主義を当たり前として、あるいは死守せんとしてきた戦後の70年間、国というものはそうやってジグザグに進みながらも、一つの方向へ向かっているのだろうと思う。最終的には歴史をふまえつつ、国に対する一つの見識であり、また「国家観」、国としてのアイデンティティというものが問われてくるのだろうと思う。「平和主義」の前提として「和解」「許し」が必要だと思う。
読了日:05月27日 著者:佐藤 健志
西洋人の「無神論」日本人の「無宗教」 (ディスカヴァー携書)西洋人の「無神論」日本人の「無宗教」 (ディスカヴァー携書)感想
キリスト教文化圏から始まる無神論には、歴史的な有神論を過剰に批判し、分裂を煽ってしまうように見える。日本人から見れば、その批判は理解できない。「和を持って尊しとなす」、その価値観が良くも悪くも対立する概念を両立、和合させてしまう日本文化故なのかもしれない。 確かに日本人は宗教嫌いかもしれないが、西洋的「無神論」とは一線を画す。それは本書にあげられている「無神論」者たちの宗教に対する批判・揶揄・攻撃を見ればあきらか。ドーキンスが取り上げられており、著者を読んでみたい、と思った。
読了日:05月20日 著者:中村 圭志
目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】感想
ここのところ、MMTに関する話題が多く、関心を持ち、読んでみた。もともと貨幣論自体はある程度理解はしていたつもりだが、近代経済学ではその貨幣というものが前提であり、また存在しない(交換を代替する価値中立的なもの)ということが逆に驚き。「経済学」というものが人間の価値観から始まる理論なので、数理という科学的・唯物的な装いを持つが、ときには非合理的な価値観でさえ人間はもってしまうので、「科学的」であるのは限界がある、とういことになるのかな、と思った。面白く読めたので、続編が7月にでるそうなので、期待している。
読了日:05月13日 著者:中野 剛志
米韓同盟消滅 (新潮新書)米韓同盟消滅 (新潮新書)感想
「自分が正しい」と思って人は行動する。しかし価値観の違いにおいて人はぶつかる事になる。そのとき分裂し、戦争になるのか、融和し、一つになるのか、で結果は大きく違ってくる。日本からみたら、韓国は「常識はずれ」の違和感だらけ、さらに過去の「不幸な」歴史から目をそらすことなくしては生きていけない姿に「写る」。現政権の「危うさ」を指摘する声は多いが、我が事としてとらえ行動できるか否か、そこに分裂か、融和か、の鍵があるように思う。理解不能で片付けられない、隣国の姿をより深く理解することが先決。その上での批判は必要。
読了日:05月07日 著者:鈴置 高史
天皇家 百五十年の戦い[1868-2019]天皇家 百五十年の戦い[1868-2019]感想
平成の30年を振り返り、新時代に対して漠然と語られる希望や、不安、今後の皇室にたいする期待や課題、といった話題にあふれてしまって、上皇陛下が示された譲位に際してのお言葉があまりにも軽視されている。私たちの課題は、皇室に対する理解をもっと深めることー日本国のアイデンティティの確立になくてはならないものーではないのか。マスコミにそれを期待するのは難しいと思うが、せめて国民の代表たる政治家、学者はそのあたりを深めていってほしいし、自分自身も「国」に対する考察を深めていかないといけないと、思った。
読了日:05月07日 著者:江崎 道朗
定年夫婦のトリセツ (SB新書)定年夫婦のトリセツ (SB新書)感想
男女脳の違いという見地からの夫婦論は、ジェンダーフリーの人たちからは異論があるのは理解できる。しかし、多く夫婦の人たちからは指示されているし、「妻のトリセツ」がテレビでも採り上げられベストセラーになっているのは納得。この本もその勢いにのったのだと思うが、こちらの方がより本質に迫った夫婦論、家族論になっていると思う。ある大学教授が男女脳を論じること自体がナンセンスな論調で著者の本を批判していたが、夫婦の実態をどれだけ把握して言っているのかは疑問。定年夫婦こそ、夫婦の本番が始まるのだとこの年になって実感する。
読了日:04月30日 著者:黒川 伊保子
ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる (文春新書)ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる (文春新書)感想
自分が交響曲にはいったのはベートーヴェンからだった。ベートーヴェンだけは何度聞いても飽きないのは、その革新性と現代に通じる複雑さがそこにある。音楽家はやはりその時代を先取りしながら、しかし、本物はクラシック~伝統としていつまでも残るものである、文学で言えば「古典」ということなんだろうと思った。クラシックが「難しい」というイメージをもってしまうのは、シェーンベルクなど、現代音楽を「新しい」だけで理解してしまおうとする音楽教育が問題なのだとおもった。シェーンベルクの背景を読んで、聴いてみたくはなったのだが。
読了日:04月30日 著者:片山 杜秀
悪魔のささやき (集英社新書)悪魔のささやき (集英社新書)感想
著者の精神科医としての知見から描かれる悪魔のささやき。人間の心に潜む悪魔性を自身の見てきたものを通して描く。「悪魔」という単独の存在なのか、人間の本性なのか、それにしても「我にかえる」ことで「悪魔」という存在を実感するという事実は、聖書に描かれている人間始祖のはじめから歴史的に描かれてきたものでなかったか。この本が描かれた時代(リーマンショック前)以上に、今がますますこの悪魔性の危険さと、それをないものとあえて否定して野蛮な世界までも肯定しようとする現代の危うさを感じてしまった。
読了日:04月30日 著者:加賀 乙彦
財政破綻の噓を暴く: 「統合政府バランスシート」で捉えよ (平凡社新書)財政破綻の噓を暴く: 「統合政府バランスシート」で捉えよ (平凡社新書)感想
国債1000兆円超=国の借金、将来の子どもたちへの負担、財政破綻が起きる・・・小学生の時からそんな勉強をして、新聞でもニュースでもそう報道され続けたら、それはもう知識として、わたしの心に根深く刻まれてしまっている。これはもう洗脳レベルで、自分としても著者の主張はよくわかるのだが、「反対論もあるでしょ・・・」みたいな思いが頭をもたげてくるのはなんでだろう。この点、経済を見つめる自分の内にある思想をチェックしてみたいと思った。
読了日:04月24日 著者:髙橋 洋一
易学でわかる[日米中]リーダーの「全運命」易学でわかる[日米中]リーダーの「全運命」感想
通読する、というより現代社会のリーダーの特質を易学からみてどのように分析しているのか、がよくわかり、興味深く読めました。当たる、当たらない、といった点より、深い人間学としての易学、国リーダーたるべき者の特質は、本人の努力はもちろん、その天性というものを見つめてみることでより深まる理解ができると思う。単に現代のリーダー嫌い、あるいはイデオロギー的に批判、評価する観点からは理解できない者もおおいと思うが。
読了日:04月22日 著者:金 河/Chris Park
幸福論 第2部 (岩波文庫 青 638-4)幸福論 第2部 (岩波文庫 青 638-4)感想
再読。今年に入って前半を一挙に読んだあと、通勤バス上で数ページずつ、行きつ戻りつしながら読了。朝のわずか10分ほどだけれど、一日の出発にあたり気づきやヒントが与えられる、または仕事とはちがう心が動く~心の体操というか、そんな効用があった。一番読み切れていなかった第2部を今回は味わうことができたかな。若者向けではあるとおもうが、年を重ねる程深まる本。永遠の世界を前提とした幸福論は自分の中ではヒルティが白眉。
読了日:04月22日 著者:ヒルティ
世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術 (新書y)世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術 (新書y)感想
たしかに、国民皆保険制度に支えられた医療システムは、国の福祉制度の美点であり、安心・安全・快適な生活をサポートしてきたことは間違いないが、そこに高度先進医療という美名のもとに、過剰な診療がまかり通る、ましてやその点を指摘することは「悪」であるかの如くなってしまっている現状は正していかないといけない。医療費の増大が国の予算を圧迫する~増税への流れもそうした過剰検査、過剰医療の是正の流れのなかで本当のこの国の未来を真剣に考えていくときなのだと思う。
読了日:04月18日 著者:室井 一辰
人生を変える幸せの腰痛学校 ―心をワクワクさせるとカラダの痛みは消える人生を変える幸せの腰痛学校 ―心をワクワクさせるとカラダの痛みは消える感想
腰痛治癒の経緯が物語形式で読みやすい。自分も坐骨神経痛で動けなくなり、3か月かかって治った体験があり、その時整体師の人に、「腰痛って、その人が将来への目標とか目的が出てきたらなくなる」と言われ、そういえば自分もそうだった、と後で納得したことがある。学問的には認知行動療法、それに本の内容ではアドラー心理学の観点も入っていて、「痛み」の目的を正しく理解していくことが、大切なのだと納得できる。痛みはその瞬間、自分でも理不尽な思いが湧いてきてしまうので、やはり冷静な対処、理解できる仲間が必要なんだろうと思った。
読了日:04月17日 著者:伊藤 かよこ
日本の「老後」の正体 (幻冬舎新書)日本の「老後」の正体 (幻冬舎新書)感想
財務省による財政政策のミス、日銀による金融政策の誤り、をバブル崩壊以後の日本の経済データにより詳細に論ずる。高校生との対話形式で読みやすいが、結構高度な内容だと思う。またしごく真っ当な内容なのだけれど、ミスを認めない、あるいは「デフレを善」とするスタンスに染まりきっている財務省・日銀・マスコミといった既得権益があまりにも私たちの思想を牛耳っているので、読みながらも自分も「インフレ悪、ハイパーインフレへの恐れ」の思いとの闘いが始まる。根深い問題で、日本社会の舵取りはまさにいま正念場。
読了日:04月17日 著者:高橋 洋一
神とは何か 哲学としてのキリスト教 (講談社現代新書)神とは何か 哲学としてのキリスト教 (講談社現代新書)感想
「人間」の認識力は、身体的限界を超えて有形・無形世界双方に対する感性、時間軸に対しては過去・現在・未来という「永遠」を把握することができるという時点で、人間の本質そのものに「一なる神」を見つけることができる。その「一なる神」がキリストに「受肉」した思想は、著者も言うようにキリスト教的なものを超えた、人間・神の探求につながって行く。あとがきを先に読んで、著者のスタンスをしっかり知ってから読み込む方が、途中で迷ったり、戸惑ったりすることが無いと、最後に思った。
読了日:04月05日 著者:稲垣 良典
「理系」で読み解くすごい日本史 (青春新書インテリジェンス)「理系」で読み解くすごい日本史 (青春新書インテリジェンス)感想
日本の歴史を「理系」で読み解くと、こんなにも合理的な、知恵のつまった歴史があり、それ故に近代化にのって世界の注目を集め(良くも悪くも)てしまう国になるのだと、納得するところ多し。しかし、「文系」「理系」と二分した学問のラインによって戦後の日本はどこかそういった本当の知恵を壊してしまっているのではなかろうか。たとえは違うが、戦時の日本での海軍と陸軍の争いと同じく、分けてしまい、対立軸をつくり、本当の発展、成長を阻害しているのではないだろうか。
読了日:03月31日 著者:
銃と十字架 (P+D BOOKS)銃と十字架 (P+D BOOKS)感想
遠藤周作がペトロ岐部について書いていたことはごく最近しって、探してみたら中公文庫は絶版になっていて、小学館が出しているこの文庫本(といっても大きめサイズ)を入手。ペトロ岐部の遺した手紙や、当時のキリシタン関連の文書などから描かれたものではあるが、その内面は遠藤周作的な信仰観で描かれているようで、その点は好き嫌いがあるように思った。沈黙でも描かれる神・イエスへの信仰を貫くにあたっての人間の弱さがそこに描かれるが、それは逆に神と人との距離を遠くしてしまわないだろうか。
読了日:03月31日 著者:遠藤 周作
眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)感想
半年以上かかった。本書の構成通り1年かけて毎日一節ずつ読んでいくのが理想だろうけれど、毎日の朝の通勤バスの中で少しずつ読み、気になったところはパソコンのテキストに書き写して、参照されている聖句と一緒に記録として残していくと、内容に対する思索・思想を深めることができた。既成のキリスト教、カトリック・プロテスタントに縛られない、しかしイエスの救いは歴史的事実として信仰を持って受け止め、永遠の生命を見つめながら生きる。19世紀末を生きた本当のクリスチャンの思想は広く普遍性を持つ。もっと多くの人に読んで欲しい。
読了日:03月25日 著者:ヒルティ
2時間でわかる政治経済のルール (講談社+α新書)2時間でわかる政治経済のルール (講談社+α新書)感想
今の日本の国はどこへ向かっているのか、アベノミクスがはたして国民を幸せにするのか、世界を幸せにするのか、日本の国を愛する、誇ることは肯定するけど、独りよがりになってしまわないのか、なにが「日本国」を規定し、希望のある未来を作り出せるのか。現実に縛られる、この本に描かれる現実をふまえ、仕組みを理解しつつ、日本がどうあるべきかを真剣に考え、行動する人が増えて行かないといけないと、本当に思う。首相は日本のリーダーとしての実行力を要求されるが、未来に対する希望その中で一人一人が見出していくものなのかも。
読了日:03月25日 著者:倉山 満
フリーダム: 国家の命運を外国に委ねるなフリーダム: 国家の命運を外国に委ねるな感想
「国家」という概念はいつから生まれたのか。唯物論者たちは聖書の中に描かれたユダヤ・キリスト教が目指してきた「神の国」を地上から追い出して、永遠の世界(霊界)に追いやり、それを単なる人間の理想・ユートピアとしてまつり上げてしまった。そして地上で国境線を引き、人間・財物を奪う、あるいは守るための闘争の道具として国家を人間だけの世界で作り上げてしまっている。本書の後半で先祖・歴史を愛さない国家観、教育が国を滅ぼしていくとの警告がなされているが、国家は先祖・歴史を愛することなくしては成り立たないものであると思う。
読了日:03月08日 著者:江崎 道朗
女の機嫌の直し方 (インターナショナル新書)女の機嫌の直し方 (インターナショナル新書)感想
著者の男性脳・女性脳議論は3冊目。第3次人口知能ブームが到来して著者が研究してきた人口知能の追求してきた男性・女性の脳の差による議論がようやく人工知能のタームで表現できるようになってきたという。タイトルは夫婦間・男女間のトラブル解消のために、円満な関係のためにといった内容だけど、内容は脳の機能を人工知能でシミュレートしていくなかで追及した結果の議論でとても分かりやすかった。今後もこの議論は続けてほしい。夫婦関係・男女関係の円満がより願われている今だからこそ。
読了日:03月04日 著者:黒川 伊保子
「死ぬとき幸福な人」に共通する7つのこと「死ぬとき幸福な人」に共通する7つのこと感想
途中まで読んで少し休憩してた。先月「医者の本音」という本を読み終えて、改めて「死」に向かう医療というものを考えてみる気になったので読み始めるようになった。文字は大きく、読みやすいのだが、一節ずつ、本を置いて考えてみたくなる。クリスチャンであるホスピス医ならではの終末期に向かう現代人の有様をやさしく、かつ「信仰」的な言葉をつかうことなく、わかりやすく伝えてくれる。死に向き合うことは、自然なことなのだと、この年になってようやく腑に落ちる想いで考えられるようになってきた。
読了日:03月02日 著者:小澤竹俊
医者の本音 (SB新書)医者の本音 (SB新書)感想
前書きにもあるけど、告発・暴露本的内容を期待して読むと期待外れする。だけど本当にタイトル通り医師の本音が描かれていて、たしかにここまで書いていいんだろうか、と思うところもあり。対して患者の本音とえいば、確かに優秀な医師、腕のいい医師にかかりたいということになるだろうけれど、医師、患者双方に相手の人格に対する尊敬、生命に対する謙虚さが必要なんだと思う。患者が医師を理解してこそ、医療という行為の目的が完結するのではなかろうか。そういう意味で医者の本音は広く知られていいと思う。というか、知るべきだ。
読了日:02月28日 著者:中山 祐次郎
「消費増税」は嘘ばかり (PHP新書)「消費増税」は嘘ばかり (PHP新書)感想
ここまで消費税について理路整然と述べられると、もう、何も言えない。しかも「嘘ばかり」のタイトルが本当にそうだ、と思えてしまう。消費税導入の経緯を現場で見続け、しかも税の本質を捕らえての主張は見事。他の本に見られる文系官僚たちに対する批判的表現(事実だと思うが)は抑制気味で、消費税の本質、徴収の適正化、目的税化の愚について考えれば、消費増税に伴う減税、軽減税率、電子マネー決済推進等の施策に費やすエネルギーは本当に無駄なものだと思うようになった。与党野党対決の前に議論すべきこと。
読了日:02月27日 著者:高橋洋一
維新と科学 (岩波新書 青版 817)維新と科学 (岩波新書 青版 817)感想
幕末・維新の華やか(?)というより激動の中で、あまり語られることのない科学・技術の導入と進展の経緯が描かれている、貴重な記録だと思う。とくに日本の工業技術の原点は造船技術の導入が大きいし、技術、理系情報は中国経由のものも多いことがわかった。こういった読み物を復刻版で読める岩波新書の今回の企画、大いに歓迎したい。他の復刻版も読んでみたい。
読了日:02月23日 著者:武田 楠雄
日本共産党の正体 (新潮新書)日本共産党の正体 (新潮新書)感想
衝動的に買って一気読み。 共産主義については、ざっくりとアンチ・キリスト教の思想・唯物論として理解していた。今回、共産党の綱領全文を読んでみた。「たたかい」という言葉が繰り返し出て来ることに驚く。考えてみれば階級闘争で発展する共産主義思想は「たたかい」が発展の本質だ。つまり、政党として存在する、ということは国に闘争・分断をもたらす、ということになる。日本に共産党が存在するということは、著者も言うように、民主主義をまもるためには必要な存在としての意義はあると思うが、闘争・分断には永遠性はない。
読了日:02月23日 著者:福冨 健一
光の量子コンピューター (インターナショナル新書)光の量子コンピューター (インターナショナル新書)感想
物理現象としての量子効果を利用して計算処理をするコンピュータ。シュレディンガーの猫や、量子テレポーテーション、測定効果など、量子世界の用語で説明され、その原理で組み立てられるコンピュータ。これはもう宇宙戦艦ヤマトで育った世代にはとても魅力的、ワクワクするコンピュータだ。写真でも見たが、電子回路で見慣れた原理とは全くちがった光通信の機材で構成されているコンピュータなんて、それだけでも驚異的なものに見えるが、とても身近になってきたのだと思う。
読了日:02月20日 著者:古澤 明
リベラルを潰せ ~世界を覆う保守ネットワークの正体 (新潮新書)リベラルを潰せ ~世界を覆う保守ネットワークの正体 (新潮新書)感想
共産主義から転換後のロシアの潮流~ユーラシア主義というものが、伝統的価値観(キリスト教、ナチュラルファミリー)も取り込んで、米国の宗教を基礎とした保守主義とも連携してリベラルと対峙する。日本人は戦後教育のせいか、もともとか、こういった観点で世界をみつめていくのが苦手な民族なのかな。良くも悪くも。最後に出てくる、リベラルが推進するLGBTに対する日本の受容も、イデオロギー闘争的なものにしていくと結局定着しないと思う。人間の本質に関する問題は慎重かつ、真摯な議論が求められる。
読了日:02月17日 著者:金子 夏樹
左巻き諸君へ! 真正保守の反論左巻き諸君へ! 真正保守の反論感想
後半の新潮45休刊問題について、わずか数ヶ月で議論は黙殺状態、なにか一過性の流行が過ぎたように感じるのは単なる新しい刺激・情報を求め、売上あってなんぼのマスコミ、という事もできるかと。もう一つ、テーマ自体、生命の根源である「性」を利用して他者を指弾、排撃するという行為は、「性」の存在意義(二性が互いのために存在する)を否定しかねない行為であることを十分に認識しないと、対話をしても平行線、分裂、無視を招いてしまう。両者とも寛容、謙遜、和解の心が重要だと思わせてくれる、という意味で貴重な議論。
読了日:02月11日 著者:小川榮太郎
陰謀の日本中世史 (角川新書)陰謀の日本中世史 (角川新書)感想
本能寺の変について、ここ数ヶ月で加治将一本(イエズス会黒幕説)、明智憲三郎説(家康黒幕説)など信長・光秀にかかわる本を読んで、この本にたどり着いた。もちろんそれだけの論点ではなく、中世全般に渡る内容がとりあげられているが、いずれも陰謀論、奇説、として特に明智説に関しては一定の評価をしつつもかなり分量の批判がなされている。もちろん、勝者の歴史観、矛盾を見つけ出し、批評していくことは大切だが、歴史からの教訓を得る、という観点も大切にしたい。苦手だった中世史により関心を持った。著者の「応仁の乱」も読んでみたい。
読了日:02月09日 著者:呉座 勇一
寺社が語る 秦氏の正体 (祥伝社新書)寺社が語る 秦氏の正体 (祥伝社新書)感想
年末に親戚から家の家紋を教えられて、そこからルーツを調べていくと、景行天皇時代にかかわりのある神社が浮かび上がってきた。元々古事記・日本書紀に関しては詳しくはないが、断片的に関心をもってきたので、ここいらで秦氏に関してもいろいろと調べてみたいと思う。それは、自分のルーツとも深くかかわるし、豊後に住む今、やはり秦氏とのかかわりは確実にある。歴史を学ぶ中に自分のルーツを探すのも、歴史に関する本を読む楽しみになっている。
読了日:01月31日 著者:関裕二
知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた (講談社現代新書)知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた (講談社現代新書)感想
前作でも感じたが、戦後日本の独立は憲法9条下、米国軍事保護下での(名目上の)独立であって、それは、中共・ソ連・朝鮮半島分断状態に対峙する当時の政治家・官僚が必死に選んできた結果であり、その問題点を明らかにしてくれる点は評価に値するが、そこから日本の政府・官僚に対するネガティブな評価、批判、さらに文政権への評価に関しては、もともと沖縄基地問題の研究から始まったものだけに、日本政府批判に対して偏りがあると思う。建設的なとらえ方で他国とのかかわりの中で現在の日本の在り方を考えるための一冊としたい。
読了日:01月31日 著者:矢部 宏治
内村鑑三 悲しみの使徒 (岩波新書)内村鑑三 悲しみの使徒 (岩波新書)感想
内村鑑三に関しては、昔から無教会派の中心的クリスチャンとして関心は持っていたが、この本との出会い(本屋にて、殆ど衝動的購入)で花開いた、という感じ。武者小路実篤や、有島武郎といった名前もでてきて、宗教面に限らず日本の文学や文化にも足跡を遺す人物であり、キリスト再臨運動の火付け役として、まさに預言者だ。そのルーツは米国でであったアメリカ人であるという。十数年内村のために祈り続けたそのアメリカ人の事ももっと知りたくなった。もう少し内村鑑三を研究してみたくなった。
読了日:01月25日 著者:若松 英輔
フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 (NHK出版新書 573)フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 (NHK出版新書 573)感想
『アドラーの「勇気」からフロムの「愛」へ』帯にかかれたこの文言が目につき、即購入。岸見本の中でも「愛」をテーマとした本の中でフロムの言葉が引用されていたので、フロム自体のことは知っていたが、ほとんど詳細は知らずに読んだ。「愛」は落ちるものではなく「愛する」という主体性のあるもの、決断である、という事は岸見本でも紹介されていたけど、フロム自身の全体的な内容が簡潔にまとめられていると思う。しかし、「愛」という言葉はあまりにも大枠な概念。心理学の範疇を超えてしまうものがあり、その点をわきまえて読む必要がある。
読了日:01月23日 著者:鈴木 晶
ド文系大国日本の盲点 反日プロパガンダはデータですべて論破できるド文系大国日本の盲点 反日プロパガンダはデータですべて論破できる感想
最初にあるように、著者のインタビュー、口頭での主張内容を書き起こしたものが主体のようだから、分かりやすいかわりに、実名での批判がでてくる、ちょっと過激な主張も目に就く。なにより著者の思考の視点が合理的であり、確率論でいってるだけ・・・みたいな発言はそのまま載せてあるので、理論的にはわかるが、ちょっと鼻についてしまうところもママある。と言ったら読むほうも「ド文系」の系譜になってしまうのかも。いろいろな論点はあるが、よく理解することも必要。タイトルがちょっと挑発的ではある。
読了日:01月23日 著者:高橋洋一
官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済 (SB新書)官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済 (SB新書)感想
この1年半ほど、著者の主張はネットを中心としたニュース映像で追っかけてきたので、大体は追っかけていくことのできる議論だった。やや挑発的なところで(A新聞解約団とか)すこし好き嫌いは出てくると思うが、とくに消費税増税に関する観点は、かなり自分の中では修正されてきた。一方的に消費税を悪玉とするつもりはないが、国のため、将来のためといいながら、実は今の利権の維持のためであり、そのうえで景気を腰折れさせてしまうような増税は一体、なんのために進める必要があるのか、そこには何らか別の意図があるのではないのだろうか?
読了日:01月15日 著者:上念 司
安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由感想
この本のタイトルは著者がつけたのか? 事件報道は他社を出し抜いてのスクープが評価もされるし、売り上げも伸びる。そして組織内での力関係が加わってくることで、営利会社として競争社会で生き残ろうとする。NHKは公共放送とはいうものの、報道現場ではそのような関係性から超越するわけにはいかない、むしろよりハッキリとした競争、評価、システムに組み込まれなければ生きていけないようになるのではないか。そういった点をはっきりと分からせてくれる内容としては貴重。もう一度いうが、タイトルと中身の解離は残念。
読了日:01月09日 著者:相澤 冬樹
思考法 教養講座「歴史とは何か」 (角川新書)思考法 教養講座「歴史とは何か」 (角川新書)感想
著者の本はこういった講義をまとめたものがいろいろと啓発されて読みやすく、面白く読める。もう5年前の内容で少し変わってきているところもあるように感じる。神学的観点から見つめる世界観、歴史観はとても啓発されるのだけれど、反知性主義の流れに対する見つめ方は少し違和感をもつ。近代の超克が確かに来ている、という著者の感覚はなんとなくわかるのだけれど、果たして著者が反知性主義として批判する現代、どうしても懐疑主義的な、不可知論的なところにいってしまいそうで、その点はどうなのかな?
読了日:01月08日 著者:佐藤 優
オウム死刑囚 魂の遍歴 井上嘉浩 すべての罪はわが身にありオウム死刑囚 魂の遍歴 井上嘉浩 すべての罪はわが身にあり感想
年初めに読むのは少々ヘビーだと思ったが、読み進むにつれ引き込まれた。平成時代の代表的・凶悪事件であるが、自分もその同時代に生きてきたので、描写内容は時代的実感がわいてくるものがある。現代の司法・裁判の問題点から社会の問題を鋭く追及してきた門田氏ならではの文章であり、井上死刑囚が残した5千枚に渡る原稿が問いかけるものは何か、という事を明らかにしてくれたという事において、興味本位的なものとは一線を画す。罪を自分の中に問い続け、生きた一人の魂を描く貴重な記録でもある。罪を超えることができるのは家族の愛しかない。
読了日:01月03日 著者:門田隆将

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